佐賀大学 ティーチング・ポートフォリオ

氏名
坂元 康成

教育の責任

 佐賀大学における私の教育の責任は、健康スポーツ科学に関する理論と実技を文化教育学部及び教育学研究科の学生に教えることである。私の担当する科目はほとんどが、教員免許や指導者資格の必修(選択必修)科目となっているため、高い専門知識とそれに裏打ちされた実践能力を持って教育現場に立って欲しいと考えている。しかし本課程には、免許取得を希望しながら、教員を志望しない学生も多く、彼らが実社会に出てから活躍できるよう、社会人基礎力を身に付けさせることも求められているといえる。
 また全学教育機構・共通基礎科目として、健康スポーツ科目や大学入門科目を担当し、健康や生涯スポーツに対する意識、キャリアアップにつながる知識を教授する責任も持っている。なお教育歴については、佐賀大学着任後は14年である。

教育の理念

 佐賀大学文化教育学部は平成8年の教養部と教育学部の廃止に伴い、文系・理系の枠にとらわれない新たな教員養成系学部として発足している。教員養成を核として、教育技術や特定の専門知識に偏らないカリキュラムを整え、国際化・情報化・高齢化の進むこれからの現代社会をグローバルかつローカルに捉えうる人材を育成しようとしている。文化教育学部の新課程(3課程)は、まさに国際的感覚を持った学生を育成するとともに、地方の国立大学の使命である「地域に根ざした大学」として地域に貢献できる人材も同様に求められていると言える。
 高校時に習得した「保健体育」の知識は、大学に来て、心理や医学、栄養、生理、指導法、動作解析といった多くの分野に深化し、学生はその中からより専門的な領域に進み、教職の免許取得を目指していくことになる。それらに興味を持たせながら展開できる教授法(理論)と授業の楽しさを維持しながら様々な種目を提供・指導できる実践能力(実技)を持つことが必要であり、私のみならず、学生もともに育んでいく大切さを教えていきたいと考えている。
 しかしながら、私の所属する人間環境課程においては、多くの学生が教員志望という確固な目的を持ちつつも、指導という現場に携わることができればそれでよし、とする者に加え、健康や福祉、身体に関する知識を併せ持った職種(健康産業、食品産業、公務員の特定分野等々)への就職を希望する者も多く、多様なニーズを持った学生に応えうる手段として、まさに人間と社会と文化の総合知を醸成していくことが必要になる。
 上記の考えに立つとき、学生が備えるべき資質となるのが幅広い人間力であろう。私の講義科目である「スポーツ経営学」や「スポーツ測定評価」においては、プレゼンテーション能力やコミュニケーションスキル、問題解決能力(論理的思考)の向上を意識した取り組みを盛り込めるよう常に意識しており、ここで得られた幅広い人間力が実践(フィールドワーク)でも生きていくのかを検証するようにしている。
 さらに授業では、困難な環境に適応できるようサービスラーニングの機会として、様々な地域貢献事業を展開している。学生諸君が健康問題や精神障害、性差、年齢差を有する人達と向き合い、語り合い、最も適した運動を処方しながら、高度な専門指導技術を習得することによって、人間力にさらに幅ができ、本課程の多様化する進路にも充分対応できる素養を獲得できるはずである。福祉分野においても、本課程で得る、運動療法の知識を身に付けた福祉士の存在は他大学には見られず、また福祉領域に強いスポーツの学生も大きなセールスポイントであり、なるべく両学問領域の融合した学修の機会を提供することも重要な責務である。(レクリエーション概論や実習、ウルトラマンクラブ等) 
 このような多くの理論と実践に裏打ちされた能力は、特に産業界においてそこでの専門知識劣っていようと、「環境への適応力」、「知識の応用力」、「人間関係に果たす潤滑油的役割」等の柔軟性を発揮するなど、この幅広い人間力が存在感となって活躍できる人材に成長してくれるものと期待を寄せている。

教育の方法

1・グループによるワークショップ方式のディスカッション(スポーツ経営学)
 ディスカッションを中心に進めるが、議論の過程で出てくる課題や方策等、発表していくものを付箋紙に記録し、一枚の模造紙(A1)の中に作品として残していくものである。テーマを複数与え、その中から活発に意見交換できるものを選択させる。現状や課題について議論しあう一方で、発言した内容をその都度記録(付箋紙)にとどめ、模造紙にレイアウトを考慮しながら張り出していく作業となる。それぞれに役割分担を決め、リーダーの進行によって結論(提言)までを導き出す。後日研究棟内に学生の学習成果物として掲示しており、学生のメモの登場頻度や記載内容で中間評価に反映させている。
 授業としての成果が上がっているかは今後検証する必要があるが、少人数のグループワークを頻繁に行うことでリーダーシップ、問題解決能力、コミュニケーションスキル、作品発表におけるプレゼンテーション能力等の能力の涵養に資するものと感じている。

2・クラスマスター制による授業展開(演習科目:スポーツB2演習)
 学生がサッカーを取り巻く様々な側面に関し、テーマを絞ってプレゼンテーションを行っていくものである。授業を行うまでに3回以上の打ち合わせ(教員との模擬授業)を行い、学生が飽きの来ない授業となるよう心がけさせている。①テーマについては、教員が提示する15タイトル程から2タイトルに絞込み、展開のシナリオ作りに入る。②パワーポイント等の資料を作成し、問題点を抽出の後再検討する。③~④授業用教材として認められたら、時間配分や強調したいポイント等について確認しあう。この作業を発表者に対し繰り返し行っている。サッカー競技を専門にし、この分野での運動学領域研究を希望する学生が常に5人以上いることから、10回程の施行が可能となっている。教育の質に関しては、学生に何を学んで演習を終えて欲しいかのアウトプットに関する希望を発表者に伝えているが、授業アンケートの回答率が低調なことから、評価結果については今後の検討材料である。
 教員の負担はかなり増えるが、学生たちの評判は当然よく、居眠りも見受けられなくなった。学習の成果は得られているものと判断した。他の演習科目や少人数の講義科目にも応用できないか検討しているところである。

3・デモンストレーションに重きを置いた教授法(実技科目:スポーツⅠB2、ⅡB2、ⅠD3)
 実技の授業では、運動のコツを習得させるためグループごとにデモンストレーターを配置(5名程度)し、技術習得に努めさせている。教職課程に対応した実技科目として、系統だった技術習熟過程や戦術の原則等押さえるべき教授内容はあるものの、指導者資格希望者、一般企業等への進路希望者にも対応できるよう、レクリエーション的運動、少人数運動遊び、鬼ごっこ系、ボール運動等常に授業の前段に展開し、これらの展開ノウハウを習得できるよう指導している。
 また実技科目においては、TAを積極的に登用しており、上記運動については事前にリハーサルを行い、検討を重ねている。
 学生インタビューでも好評を得ていることを確認しており、成果を資料として積み上げておきたいと考えている。TA及びデモンストレーターについては、適宜「振り返り」も行っており、課題があれば他のプロジェクト時にリトライさせるなど学習の成果向上を促している。

4・様々な対象に合わせた運動教室の実践指導や授業を通しての学び
 健康スポーツ科学講座では、様々な地域貢献プログラムを提供している。単位として認定されるものが2プログラム(高齢者健康運動教室、発達障害児運動教室)であり、教員が主導しながら受講学生がトレーナーとなって事業を展開するものである。その他に多くの運動を経験する教室が子供向けに4プログラム(土日:毎週1回から2回)提供されている。
専門種目の学生や大学院生がコーチとなってこのようなフィールド実習に参加し、運動する楽しさを工夫しながら伝えることで、高度な専門知識に加え適応力を養成することができるため、福祉分野所属の学生や学校教育、教育心理、障害児教育、等の学生にも参加を呼びかけている。私の展開する運動クラブや巡回指導にも年間延べ200名の学生コーチが動員されており、地域にも歓迎されるばかりか社会人基礎力を上げる有効な手段として評価できるものと考えている。

今後の目標

1・短期的目標
講義科目のシラバスを見直し、改組後の教育理念を反映した内容に対応しうるものにして整合性を図る。またオンライン授業の導入が今後本格化するすることも合わせて、授業用パワーポイントを双方向機能やブレイクアウトセッションを組み込んだいないようにしておくなど充実を図る。
2・新学部となった教育学部の学生においては、第一義に採用試験突破という目標ができている。これに向けて全力で対策を立てていく指導は必要不可欠であるが、現場に立ったのち、児童生徒に尊敬される存在であるよう、これまで通りの人間力(適応力、応用力、コミュニケーションスキル等)が要求されている。ボランティア活動やフィールド実践経験等教育経験を多くさせることにより、この能力を高めるのみならず、体育の楽しみや学びを伝えられる教授法の獲得に向けた機会を

エビデンス


参考資料

参考URL

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