佐賀大学 ティーチング・ポートフォリオ

氏名
三島 伸雄

教育の責任

私は、1995年11月に佐賀大学理工学部に赴任して約18年間、主として理工学部都市工学科ならびに大学院工学系研究科都市工学専攻の専門教育を担当している。
この都市工学科は、1997年度の理工学部全体の改編に伴って建設工学科と土木工学科が統合されて(それまでも実質同じ教育を行っていた)設置された。そして、学生及び地域からの強い要望に応えるために建築・都市デザイン分野を充実させ、2006年度から現在の2コース制(都市環境基盤コースおよび建築・都市デザインコース)を導入して現在に至っている。すなわち、現在の本学科の特徴はいわゆる土木と建築とが融合したところにあり、それは全国の国立大学でも唯一である。言い換えると、多くの新入生は自らの志向や適性がまだ定まっておらず学力も十分でないことを念頭に、建設系という分野の中で土木・建築の相違と特徴を理解させ、自らの将来を見定めつつ大学卒業時に求められる専門力を養っていくことが本都市工学科の教育方針でありアピール点である。
そういうなかで、特に私に求められている教育の責任は、1)建築・都市デザイン分野の専門教育、2)都市工学科における専門導入教育、3)全学における教養教育(主題科目)である。1)においては、建築・都市デザイン関連分野で働いていくための建築士や技術士、設備士、建築施工管理技師などの資格を取得するために必要な教育があり、私が担当するのは設計・計画および法関係である。大学院ではその高度化と社会での実習(インターンシップ)を担当している。また、卒業研究および修士研究(制作を含む)、博士論文の指導がある。2)においては、初年時に専門領域を意識させていくことが私の担当である(具体的には都市工学概論と図学)。3)においては、特に私の専門に軸足をおきながら、全学の学生には専門から見える教養的知識ならびに都市工学科の学生には専門に役立つ基礎的知識を教えることである。

教育の理念

私の建築・都市デザインにおけるモットーは、「真実は現地にあり」ということである。それを踏まえて、専門教育において特に留意している理念は以下の4つある。
理念1:実社会への意識  建築・都市デザインを理解する上で書物は重要である。しかしながら、現地に行かないと分からないことは多くある。そして、実務はまさにそういう実学の世界である。したがって、学生が将来的に実務を行う上でも、実社会とのつながりを意識的に伝える教育が必要であると考えている。
理念2:自主性の誘導  建築・都市デザインの計画設計は、学問としても社会の要請としても、答えは一つではない。例えば、ある敷地に建物を建てるときにも、その計画やデザインは何に力点を置くかによって異なり、設計者によってももちろん成果物が異なる。マニュアル通りにやればできる世界ではない。また、実務においても敷地分析などを自ら行って説得力のある設計を行っていくことが求められ、それが最終的にオリジナリティのある作品となる。したがって、自ら答えを探しにいくような「自主性」が重要であり、そう仕向けることをできるだけ試みている。
理念3:社会性の鍛錬  実際に設計を行うときには必ず相手を伴う。したがって、相手の要望を受け入れつつ、自らの空間的理想を見いだして実現させていくことが求められる。逆に、自らの成果物に対して人の意見を聞き、刺激を受けることも望まれる。すなわち、学生の「社会性」を鍛えることが必要である。
理念4:基礎的専門知識と技術の重視  建築に関する専門技術は年々高度化多様化している。しかし、それらの全てを大学の4年間だけで身につけさせることは難しい、というより無理である。むしろ、地方国立大学を卒業する学生として、恥ずかしくない「基礎的な専門知識と技術」をしっかりと修得させることが必要である。言い換えると、実務的にも堅実に物事を理解し、分析していきながら、計画設計に反映できる人材を輩出することが地方国立大学としての使命である。そういう意味でも、学んだことが社会に出たときの基礎になることを志したい。

教育の方法

私の授業(講義・演習)および研究指導における特徴的な教育方針と方法を列挙すると、以下のようである。
3.1. 講義について
 <学 部>
・	自分の実務経験を踏まえて、講義の冒頭で実務や社会との関係を意識したプロローグを示し、どのように役立っていくのかを意識させる。理念1
・	毎回の主題を明確にし、その中で完結した内容で講義し、段階的にステップアップする。そして、前に話をしたこととの関連も含めて講義する。理念4
・	PPTと対応した穴空きプリント(添付資料2)を配布し、基礎的に必要な専門用語等を書き留めながら講義に集中させる。理念4
・	用語のプリント(添付資料3)を予習プリントとして配布し、授業前に必要な専門用語等を最低限頭に入れさせる。理念4
・	演習との関連を意識して講義を行う。理念4
・	毎回、講義内容に関わる小テスト(添付資料4)を行い、講義後や次週の講義前までに提出させる。次週の冒頭で解説を行う。理念4
・	定期試験は、用語のプリントと講義で特に力点を置いたところに関するキーワードの確認、および小テストを踏まえた問題を全体評価の80%とする。残りの20%は出席点とし、伝言板出席カード(添付資料5)で出席回数を確認する。ただし、小テストが提出されていない場合は出席とみなさない。理念4
 <大学院>
・	少人数の講義であることを利用して、毎回異なる履修学生にPPTを準備・発表させ、ディスカッションを行う。理念2 理念3
・	ディスカッションでは、あらかじめ主題を与えておき、それに対するデータを集めさせてディベートを行い、発表する学生以外からも意見を求める。   理念2 理念3
・	成績評価は、発表に基づいて再整理させたレポートを60%、ディスカッションの内容等を20%、出席カードに基づく出席回数を20%とする。理念4
 <共 通>
・	伝言板出席カードを配布して、毎回の講義に対する感想や質問などを記入させ、それに対するコメントを書いて返却する。理念4

3.2. 演習について
 <学 部>
・	住宅や小学校などの明確な課題(課題書:添付資料6-1)の中で、講義で学んだことを応用あるいは踏まえて提案するように求める。理念4
・	学生自身の出身小学校を対象にすることによって、夏休みの宿題で自ら地域や現地のことを調べないといけないように仕向ける。理念2
 <大学院>
・	より現実世界に近い形で施主の想定やコンペ(設計競技)を取り込んで演習を行い(課題書:添付資料6-2)、実社会を実感させる。理念1
 <共 通>
・	受け身ではなく、主体的に自ら手を伸ばすように要求する。具体的には、自ら必要なデータや情報を収集して作品を制作させ(演習優秀作品例:添付資料7)、それに対する意見交換を行って説得力のある作品をつくらせる。理念2
・	学生間や教員・TAとの間で意見を交換することを求める。理念3
・	演習成果を地域住民の前での公開討論という形で社会の眼に触れさせるとともに、冊子等を作成して発表する。理念1 理念2 理念3
・	演習成果を建築家(学外講師)の前で発表させ(添付資料7)、自らの取り組みに対する実務的意見等をもらうとともに、刺激を受けさせる。  理念1 理念2 理念3

3.3. 研究指導について
・	大きな研究の主題は設定するが、学生自らが研究テーマを考えるように指導する。理念2
・	自ら考えたことや準備したことをゼミや個人指導のなかで発表させ、議論を繰り返す。議論の中で、具体的な指示をする。理念2 理念3
・	建築系の研究室全体で発表する機会を定期的に設けることによって、時期的な目標を持ってフォーマットにしたがった準備をさせるようにし、緊張感をもたせる。理念2 理念3
・	執筆した文章はできるだけ細かく目を通し、修正の方向性や具体的な指示を赤ペンで手を入れて修正させる。理念4

今後の目標


エビデンス

日本建築学会設計競技の学生作品
授業評価アンケート

参考資料

参考URL

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