佐賀大学 ティーチング・ポートフォリオ

氏名
本田 智子

教育の責任

現在担当科目はありません(参考:専門分野=デザイン)

教育の理念

総合大学の強み(デザイン以外の分野との協力体制)と、有田キャンパスの専門性をうまくミックスすれば、今までになかった課題解決法が生まれるかもしれません。デザイン(問題解決・価値創造)は多くの視点や知見を必要とします。その際に問題解決チームとして必要な専門性を集結できることは、たいへん大きな力となり、また異分野の学生同士が集まることで、発想の化学変化が起きることを期待します。

教育の方法

1.デザインの役割やプロセスに関する教育
デザインとは製品のスタイリングを行うだけの仕事ではありません。問題を発見し、解決策や改善策を見つける仕事と言ってもよいでしょう。現場に足を運び、調査やヒアリングを行い、なぜうまくいかないかという問題点を特定していく、そしてその解決策を目に見える形にする。製造・流通・売り場・ユーザーの各場面で、これまで問題の当事者が見ていなかった視点からの問題の解決を探るのです。デザインには様々なプロセスがありますが、私は体系化がされ使いやすいデザイン思考のプロセスモデルを用いてきました。

2.デザイン思考の第一段階「共感」の実践方法の教育
学習の場ではフィールドワークを行い、自分やチームの頭の中で考えている問題だけでなく、実際に起っている現実的な課題や人々の行動を調査観察することが基本であると考えます。フィールドワークにおいては、自分とは異なる価値観を発見しても否定せず、ひとつのサンプルとして受け入れる姿勢を身につけ、現場での観察者のあり方を理解し、実践することも重要です。

3.デザイン思考の第二段階「問題定義」、第三段階「創造」の実践方法の教育
ブレインストーミングで自由な発想を引き出し、さらに情報や発見を整理することが課題解決には有効です。意識化されていない問題点やこれからクリアすべき課題を洗い出す方法を理解すれば、問題解決が容易になります。またグループで行う作業はコミュニケーション能力の向上にもつながり、さらにKA法や価値マップ、KJ法などを用いて、視覚の助けも借りながら実践で理解することが大切です。

4.デザイン思考の第四段階「プロトタイプ」、第五段階「テスト」の実践方法、及びデザイン思考で最重要なマインドセットの教育
プロトタイピング→テストのプロセスを繰り返すことで、よりニーズにマッチした製品に近づくことができます。これはそのプロセスを実際に行うことでしか実感できません。そこで大切なのはITの時代にあっても、自分の手を動かして造形を学ぶことです。実際に手を触れて使う肌感覚は、物事の最終判断や感性を鍛え、学生が社会に出てからも試行錯誤を繰り返して結果に到達するための強い動機づけ、フットワークの軽さを身につける良い修練となります。反復の習慣づけを徹底し、クリエイティブな「やってみよう精神」を身に着けます。

5.ビジュアライゼーション
情報をいかに他者にわかりやすく伝えるかは、デザインの役割として最重要です。デザイン思考のマインドセットの中に「言うより見せる」というものがありますが、チームメイキングやモチベーション喚起にビジュアルによる理解しやすいメッセージは強い力となります。インターネットにより即時に大量に発信される情報の中であっても強いメッセージとして伝わる情報発信の手法を学ぶことは、デザイナーにとっては最重要なスキルです。

6.サスティナブル教育
これからは環境問題を抜きにしてデザイン教育は成り立たないと考えています。資源枯渇や環境悪化を引き起こすような産業は未来には生き残れません。SDGsに示された内容を理解し実践するには、まず環境や社会問題についての正しい情報を得、現在実際に対処されている事例を学ぶことが必要でしょう。正確で幅広い情報を得るにはどのようにしたらよいか、自身が判断を誤らない情報を得られているかを理解できるスキルを身につけ、システム全体から問題を俯瞰する姿勢を身に着けることが必要となります。

今後の目標

地域が今後も光彩を放っていくためには、未来を見据えた新たな考えを柔軟に取り入れ、伝統を大切にしながらも進化を続けていくことです。その3つの矢として「デザイン思考・アジャイル開発」「コンプライアンス・知的財産権」「SLOC」を教育の中心に据えたいと考えています。

「デザイン思考・アジャイル開発」はオープンでチャレンジングな姿勢で、イノベーションを生み出す考え方です。デザイン教育では標準的な考え方ですが、これを学生だけではなく地域の人々にもわかりやすく理解できるよう努めたい。

「コンプライアンス・知的財産権」は地域や産地の信頼や価値を高める、ブランディングにつながる考え方です。SNSなど個々がつながる社会において、様々な事がオープンになっていきます。社会的に正しい行動と知的財産権は存続のために必須の柱となります。

「SLOC」とはsmall, local, open, connectedの略でイタリアのEzio Manzini が提唱する、サスティナブルな事業のあり方です。不確実性の高い現代において、小さなことは変化し続ける状況に対して素早くトライアンドエラーができ、地方ではコストが安くリスクが低いため、競争力を高く保つことができます。ネットを通じた個人からの情報発信があたりまえとなった今では、地方の小さな事業家であっても大企業と変わらぬ影響力を持つことが可能になっています。その際に鍵となるのがオープンさです。自らの考えや、プロセスなど、様々なことをオープンに伝えることで顧客は共感を覚え、自分事のように捉え、親身な協力者やファンとなってくれます。そのような繋がりが継続への大きな力となっていきます。

エビデンス


参考資料

参考URL

標準版TP

シラバス